Ultra Halloween 狂騒曲朝起きたら、身体に異変が起きている気がして目を覚ました。 衣笠はベッドから身を起こし、顔を洗いに洗面所へ向かった。 顔を洗い、髪を梳かそうと櫛を動かし頭に何か付いていることに気が付く。 「痛・・・・これは、何でしょう起毛状の・・・・・」 鏡を見るとそこには自分の頭にありえるはずの無い耳が生えていたのだ。 獣の耳、しかもこれは多分。 「猫・・・・・耳・・・。」 信じられないと言う様に、鏡に食い入るように見ている。 そういえば腰の下にも嫌な違和感が感じる。 恐る恐るパジャマの中へ手をしのばせると、長い尻尾が現れた。 (しかも引っ張ると自分の一部のように痛い。) これは悪い夢なのだろうかと痛む頭を撫でながら考えた。 しかし考えても答えは出ずに途方にくれている時、携帯が鳴りディスプレイを見て慌てて通話ボタンを押した。 「南先生?どうされましたか?」 『衣笠先生!!いきなりスミマセン。一つお聞きしたいのですが、昨日お渡ししたマフィンお召し上がりになりましたよね!?』 「え?えぇ、美味しく頂きましたよ。それが何か?」 電話の向こうから「あぁ・・・」という落胆の声が聞こえた。 『衣笠先生・・・その。身体に何か変な事起きていませんか?』 「起きてます。ものすごく起きてます。何かご存知なら教えて下さい。ちょっと外へ出れない状態なので。」 『はい。そのそれが・・・。』 話を聞いたところによると、これは“真壁財閥の財力”と“斑目瑞希の頭脳”によって作られた薬のせいらしい。 その薬を飲んだものは次の日の朝、猫耳と尻尾が生えるというものらしい。効果は一日中。ハロウィンの素敵アイテムとして用意したらしいがどうしても試してみたくなったらしい。 南は“お菓子作りがどんなに下手な人でもうまくマフィンが作れる粉”と聞いてもらったらしく、早速作り自分のおやつで食べようと思っていたらしい。 ただ予想外な出来事は起こるもので、その日珍しく「お腹がすきましたね」と言った衣笠に、何も知らない南は自分のマフィンを渡したのだ。 因みにマフィンは10個中1個しか成功しなかったらしい。 事の次第を聞いて慌てて電話をしたようで、時既に遅しとはまさにこの事だと内心衣笠は思った。 『すみません!今日一日で済むのは確かなので、明日にはなくなっているんですけど・・・逆を言えば今日一日はそのままなんです。』 「まぁ、なってしまったものは仕方ないですね。教えてくれてありがとうございます。それを聞いて安心しました。」 その後適当に話をした後、電話を切りため息をついた。 「困りましたね。」 今日は九影と出かける約束をしていた。この姿ではとてもじゃないが出掛けれない。 衣笠は携帯を再び開き、九影にメールを送った。 「これで今日の用事はなかったことになりましたし、家でゆっくりしますか。」 キッチンへ向かい冷蔵庫を開ける。無意識のうちに牛乳を手に取り、衣笠は顔を顰めた。 先ほどまでは紅茶を飲もうと思っていたのに、本能的に牛乳(しかも温めに暖めた)が飲みたくなり嫌な予感がした。 (もしかして猫の本能ですか?) 仕方なく、牛乳をマグカップに注ぎレンジへ淹れて暖める。 温まるのを待っている間にチャイムがなり、衣笠はビクリと身体を震わせた。 宅配便なら居留守を使えばいいし、一応玄関まえに誰がいるのかドアホンで確認する。 「九影くん!?」 ドアの前で首を傾げ、携帯をいじっている。 左手にはスーパーの袋を持っている。 リビングのソファに投げ出していた携帯が鳴り響き、衣笠は再びビクッと震えた。 (どうしよう・・・。) そのまま無視していれば、留守電になり九影は帰るだろう。 だが衣笠は無視することが出来ず、そのまま携帯を取った。 「もしもし・・・。」 『キヌさん?俺です。風邪って効いたんで食い物持って来たんですけど。」 「風邪がうつりますから」 『そんな事言って、俺は頑丈だから大丈夫ですよ。それより、まともに食事を摂らなくてこじらせる方が心配です。」 言い切られ、衣笠は変な汗をかいた。 風邪と嘘をつかなければ良かった。だが、他にキャンセルする理由が浮かばなかったのだ。 「実は、風邪って嘘なんです。でもその、外に出れない理由があって。」 『開けてください。』 声のトーンが急に低くなり、衣笠は正座した。 尻尾と耳はへにゃりと垂れ下がっている。 「お、驚いて声を上げないと約束できますか?」 『えぇ、できますよ。』 「・・・・・分かりました。ちょっと待っていてください。」 きっぱりと言い切られ、これ以上話をしても帰ってもらえそうにないので衣笠は玄関のドアを開けに向かった。 電話が切れて待っていると、ガチャリと鍵の開く音。そして「どうぞ、入ってください」という声が聞こえた。 言われたとおりにドアを開けて中へ入り、ドアを閉める下を向いていた九影が顔を上げると猫耳のついた衣笠が恥ずかしそうに見ている。 「・・・・・・・・・付け耳ですか。」 「第一声がそれですか。でも残念ながら体から生えてるんですよ。説明しますからどうぞ上がってください。」 言われるがままに靴を脱ぎあがると衣笠がドアの鍵を閉める。すれ違いざまに頬に耳が当たり、思わず振り向いた。 すると丁度尻の部分からは不自然に尻尾が出ているのが見えた。尻尾は器用に左右に動いている。 鍵をかけ終え、視線に気づき振り向くと九影に凝視されていた事に気づき、顔を真っ赤に染めながら背中を押して中へ入るように促した。 リビングのソファに座り事の次第を説明すると、九影は頭を抱えながらため息をついた。 「真壁・・・。」 「まぁ、ある意味僕で良かったと言えば良かったんですけど。」 南が食べていたら、また更にややこしくなっていただろうと二人で納得した。 「それにしても、凄いもん作るな。」 「えぇ、お陰でなんか丸いものを見たり、動いているモノに反応したり見た目以外にも何か変化が起こるみたいで困ります。 尻尾や耳も引っ張られると痛いですし。」 「そうなんですか?尻尾とか神経とおってるんですか。」 九影が思わず尻尾を触り、撫で上げた。衣笠は急に顔を赤く染め九影にしがみ付いた。 「やっ、あまり・・・触らないで///」 「あぁ、すみません。・・・もしかして」 再び尻尾を触る、衣笠は九影に凭れかかりながら震えている。 「弱いんですか?」 「んっ・・・・今日は駄目ですよ。うつるとは言われて無いけど・・・」 「俺は構いませんよ。」 「ちょ・・・・んっ」 唇を重ねられ、否を唱えることもできずそのままソファに押し倒された。 快感に負け始めていた衣笠はそのまま目を閉じ、九影の首へ手を回した。 (もう、知りませんからね・・・・) 数時間後ソファの上でグッタリと項垂れている衣笠の姿があった。 「大丈夫ですか?」 「何か普段よりも疲れてますね・・これも薬のせいでしょうか・・・はぁ。」 「ミルクとチーズのリゾット作りましたよ。食べれますか?少し冷めてるから食べやすいでしょう。」 「頂きます。」 むくりと起き上がりリゾットを口に運ぶ。視線に気づき九影のほうをむいた。 「何ですか?じっと見て。」 「いや、キヌさんはどんな姿も似合いますね。」 「嬉しくありませんよ〜?」 ニッコリと微笑みながら言うが、尻尾はパタンパタンとソファを叩きつけている。 どうやら本当に嬉しくないらしい。 「何か、まだハロウィンじゃないのにハロウィンの日が不安になってきたのは気のせいですかね?」 「・・・・・・・気のせいにしておきましょう。前日までは」 二人は心の中で「今年は大変なことになりそうだ」と思ったのだった。 END THANKS
玉城ゆら様:NoTitle
|